ベトナムの「バイク社会」と力強い日常

街を動かす脈動

ベトナムの都市に降り立ったとき、誰もが真っ先に息をのむ光景があります。それは、地鳴りのようなエンジン音とともに道路を埋め尽くす「バイクの波」です。

朝から晩まで絶え間なく行き交う無数のバイク。初めて目にする人には少し圧倒されるようなカオスな風景に見えるかもしれません。ですが、これこそがベトナムという国の底知れぬエネルギーと、人々の逞しい日常を支える「街の脈動」そのものなのです。

 

 

 

 

 

 

バイクは単なる移動手段ではない「生活の舞台」

ベトナムの人々にとって、バイクはただ目的地へ移動するための乗り物ではありません。暮らしのあらゆるシーンと結びついた、いわば「動くリビング」であり「生活の舞台」でもあります。

街を歩いていると、バイクの驚くべき使われ方に何度も出会います。

 

・驚くほど積載力:自分よりもはるかに大きな家具や、山のような段ボール、時には大きな観葉植物まで器用に積んで走る姿。

 

・バイクの上の憩いの時間:木陰にバイクを止め、シートの上に器用に身体を丸めて気持ちよさそうに昼寝(シエスタ)をする人々。

 

・家族の団らん:1台のバイクに家族4人が仲良く乗り、子どもを真ん中に挟んで笑顔で風を切る光景。

 

どんな状況でもしなやかに使いこなし、日常をたくましく生きる人々の姿からは、どこか温かく大らかなパワーが伝わってきます。

 

信号のない交差点と「暗黙の了解」

一見すると交通ルールがないかのように思えるベトナムの道路ですが、実はそこには目に見えない不思議な「暗黙の了解」が存在しています。

 

バイク同士はお互いの動きを感覚で察知し、まるで生き物の群れのように絶妙な間隔ですれ違っていきます。クラクションの音も、相手を威嚇するためではなく「ここに私がいますよ」とお互いに存在を知らせ合う、ベトナム流の思いやりのコミュニケーションなのです。

 

旅人に伝授する「道を渡るときのコツ」

ベトナム旅行で最もスリリングであり、同時に旅の醍醐味とも言えるのが「バイクの波を横断すること」です。

 

途切れることのないバイクの列を前にすると足がすくんでしまいますが、安全に渡るためにはちょっとしたコツがあります。

 

 

1.走らず、ゆっくり一定のペースで歩く(急に止まったり走ったりするのが一番危険です)

 

2.ドライバーと目を合わせる(アイコンタクトで存在をアピールします)

 

3.迷わずに前へ進む

 

歩行者が一定の速度で歩いてさえいれば、バイク側が速度や角度を微調整して、驚くほどスムーズに避けてくれます。無事に渡りきれたときのちょっとした達成感は、ベトナム旅ならではの忘れられない思い出になるはずです。

 

ベトナムの熱気を肌で感じる旅へ

大都市の発展とともに車の数も増えつつあるベトナムですが、今なお街の主役は間違いなくバイクとそこに暮らす人々です。

 

排気ガスの匂い、エンジン音、そしてバイクの上で見せる人々の弾けるような笑顔。ベトナムを訪れた際は、ぜひカフェのテラス席からその圧倒的な熱気を眺め、時には勇気を出してその波へと一歩を踏み出してみてください。そこには、この国が持つ一番ありのままのエネルギーが満ちあふれています。