暦に刻まれた国の価値観
カレンダーの赤い数字を見て、理由まで考える人は多くありません。
「祝日だから休み」。それだけで、私たちは一日を受け取ってしまいます。
けれど世界に目を向けると、その”休みの日”は驚くほど雄弁です。
なぜその日なのか。 なぜ国を挙げて仕事を止めるのか。
そこには宗教、歴史、家族観、そして国民が何を最優先に生きてきたかという価値観が、静かに刻まれています。
祝日は単なる休日ではなく、その国が「忘れないと決めた記憶」なのです。
世界の祝日をたどっていくと、ニュースや教科書では見えにくい国の素顔が浮かび上がってきます。
カレンダーを読み解くことは、文化を読むことでもあるのです。
日本の祝日は本当に多いのか
「日本人は働き過ぎ」。
海外では、そんなイメージで語られることが少なくありません。残業が多く、休みも少ない――確かに、そう感じる場面はあります。
ところが、数字だけを見ると、少し意外な事実が見えてきます。
日本には、法律で定められた「国民の祝日」が年間16日あります。
これは、主要国と比べても決して少なくありません。
例えば、休暇が多い印象のあるフランスやドイツ、アメリカ、中国はいずれも祝日はおよそ11日前後。
「もっとたくさん休んでいそう」というイメージとは、少し違う結果です。
ただし、ここで単純に「日本はよく休んでいる」と結論づけるのは早計です。
なぜなら、海外では祝日以外の休み方がまったく違うからです。
フランスやドイツでは、有休休暇が年間30日前後あり、その多くが当たり前のように消化されます。
一方、日本では「みんなが働いている日に休む」ことに心理的なハードルを感じる人が多くなります。
だからこそ、「この日は全員が休む日」として祝日が多く設定されている。そんな見方もできるのです。
自分の権利として好きなタイミングで長期休暇をとれる海外の働き方に、「正直、うらやましい」と感じる日本人が多いのも、無理のない話です。
なぜ外国の祝祭日を把握しておく必要があるのか
海外と関わる仕事をしていると、祝祭日の知識は想像以上に重要になります。
理由は単純で、その日を境に、ビジネスが突然止まることがあるからです。
相手の国の祝祭日を把握していないと、「明日から休みだった」という事実を後から知ることもあります。
さらに厄介なのは、事前の一言もなく連絡が取れなくなるケースです。長期休暇の直前に案件を進めてしまうと、準備や納期に大きな影響がでることも珍しくありません。
だからこそ、取引先の国の祝祭日や、担当者が長期休暇を取りやすい時期は、スケジュール管理の前提条件として押さえておく必要があります。
一方で祝祭日の知識はビジネスチャンスにもなります。
インバウンド向けの研修を行っていると、「この時期にこの国の人が多かった理由が、やっと分かった」という声をよく耳にします。
どの国が、いつ連休に入り、どのタイミングで海外旅行に出やすいのか。そうした傾向を知っているだけで、接客体制や商品準備、販促の考え方が大きく変わります。
さらに忘れてはいけないのが、日本側の祝日の伝え方です
ゴールデンウィークやお盆休みは、日本人にとっては常識でも、海外の取引先や新しく担当になった人にとっては道の領域です。
「言わなくても分かるだろう」と思わず、早めに共有する。
それだけで無用な混乱や誤解を防ぐことができます。
祝祭日は文化の違いであると同時に、ビジネスの前提条件でもあります。
知っているかどうかで、仕事の進み方は大きく変わってくるのです。
祝日は、その国の価値観を映す鏡
世界の祝日は、その国が何を大切にしてきたのかを映し出す鏡だと言えます。多く国では、宗教行事が祝日の中心となっており、信仰や家族と過ごす時間が、日々の生活よりも優先される傾向があります。一方で、独立記念日など歴史的な出来事を祝う国では、建国や勝利といった国の歩みそのものが休日として定められています。農業を基盤としてきた国々では、収穫祭が今も
祝日として残り、自然への感謝が大切に受け継がれている点も特徴的です。
それに対して日本の祝日は、特定の出来事を記念するというよりも、「感謝」や「敬い」といった感情や理想の姿を示すものが多く、社会の調和を保つ役割を果たしています。祝日を見比べてみることで、それぞれの国が大切にしてきた価値観や国民性が、自然と浮かび上がってくるのです。
まとめ
祝日はただ休むために存在しているわけではありません。
そこには、その国が大切にし、どのような歴史や価値観を受け継いできたのかが表れています。世界と日本の祝日を比べてみると、働き方や休み方の違いだけでなく、社会の成り立ちや人々の意識の違いまでもが見えてきます。カレンダーに並ぶ一つひとつの祝日を意識して眺めてみることで。異文化への理解はより深まり、ビジネスや日常コミュニケーションにも新たな視点をもたらしてくれるはずです。