世界のスイーツ

世界の伝統スイーツ物語

世界には、国の数だけ”甘い物語”があります。

宝石のように輝くフランスのマカロン、年齢のように時を重ねるドイツのバウムクーヘン、満月を思わせる中国の月餅。

どれも単なるお菓子ではなく、その土地の歴史や風習、人々の暮らしと深く結びついてきました。

材料は小麦粉や卵、砂糖といった身近なものでも、作り方や意味が変われば、まったく違う文化の顔を見せてくれます。

甘さの奥にあるのは、誇りや祈り、団らん、そして時代を超えて受け継がれてきた知恵。

一皿のスイーツから始まる、小さな世界旅行へ。

 

 

 

フランス 「マカロン」

宝石のように色鮮やかな見た目が印象的なマカロンは、フランスを代表する洋菓子のひとつです。外はさくっと軽く、中はしっとりとした独特な食感が魅力です。

原型はイタリアの伝統菓子「アマレッティ」といわれ、16世紀にフランスへ伝わりました。卵白とアーモンドプードルを使った生地に、華やかさと繊細な味わいから、贈り物としても人気があります。

 

フランス 「カヌレ」

外側の香ばしいカリっとした食感と、内側のしっとりやわらかな口当たりが魅力のフランス伝統菓子です。名前はフランス語の「cannelé(溝のある)」に由来し、表面に縦の溝が入った独特の型で焼き上げられます。

このお菓子は、かつてワインの清澄に卵白が使われた後、余った卵黄を有効活用するために考案されたといわれています。バターや牛乳、小麦粉、砂糖にラム酒を加えた生地をじっくり焼くことで、外はこんがり、中はもっちりとした食感が生まれます。

 

イギリス 「イングリッシュスコーン」

イギリスのアフタヌンティーを語るうえで欠かせないのが、イングリッシュスコーンです。丸く素朴な見た目と、ほろりと崩れるやわらかな食感が特徴です。

生地の甘さは控えめに作られているため、クロテッドクリームやイチゴジャムを添えて味わうのが定番の楽しみ方。濃厚なクリームと甘酸っぱいジャムが合わさることでやさしい風味が引き立ちます。

一方、アメリカで親しまれているスコーンは、よりしっとり重みのある食感で、チョコチップやナッツなどの具材が練り込まれていることが多く、そのままでも十分甘みを感じられる点がイギリス式との違いです。

 

スペイン 「チュロス」

スペインやポルトガルで親しまれてきた伝統的な揚げ菓子で、日本でも映画やテーマパークの影響で広く知られる存在です。外側はサクッと香ばしく、中は軽やかな食感。仕上げに砂糖やシナモンをまぶすのが定番です。

生地は星形の口金で絞り出してから揚げますが、これは見た目の美しさだけでなく、揚げる際に中の蒸気を逃しやすく、安全に仕上げるための工夫でもあります。

素朴でありながら、つい手が伸びる魅力を持つスイーツです。

 

イタリア 「ティラミス」

エスプレッソをたっぷり染み込ませたフィンガービスケットに、マスカルポーネチーズを使ったなめらかなクリームを重ねて仕上げるデザートです。ほろ苦さとコクのある甘みが重なり合い、少し大人びた味わいを楽しめます。

「Tira mi su(ティラ・ミ・ス)」はイタリア語で「私を元気づけて」「気分を持ち上げて」という意味が込められています。コーヒーの力と甘いクリームの組み合わせが、まさにその名の通りの高揚感をもたらします。

日本では1990年代に大きなブームとなり、多くのカフェや洋菓子店で提供され、一躍定番スイーツとして定着しました。

 

ドイツ 「バウムクーヘン」

ドイツ生まれの伝統菓子として知られるバウムクーヘンは、薄く焼いた生地を何層にも重ねて作られます。

その断面が木の年齢のように見えることから、ドイツ語で「木のお菓子」という意味の名が付けられました。

しっとりとした食感とやさしい甘さが特徴ですが、本場ドイツでは原材料や製法に厳しい基準が設けられています。その条件を満たさないものは、正式なバウムクーヘンとして販売できないとされるほど、伝統が大切に守られているお菓子です。

見た目の美しさと職人技が詰まった、歴史ある焼き菓子といえるでしょう。

 

ベルギー 「ワッフル」

ベルギーを代表する焼き菓子のひとつがワッフルです。卵や小麦粉、バター、牛乳、砂糖にイーストを加えた生地を発酵させ、格子状の型で挟んで焼き上げます。あの規則正しいチェック模様は、見た目の可愛らしさだけでなく、外側を香ばしく仕上げるための理にかなった形でもあります。

地域ごとに特徴があり、ふんわり軽いタイプから、外はカリっと中はもっちりとした

食感まで様々なフルーツやメープルシロップ、ジャムを添えて味わうのが定番です。

 

オーストリア 「ザッハトルテ」

オーストリアで生まれたザッハトルテは、1832年に菓子職人のフランツ・ザッハが考案したチョコレートケーキです。

現在もウィーンの名門ホテル。ホテル・ザッハーの名物として広く知られています。

このケーキは、濃厚なチョコレートスポンジの間に甘酸っぱいアプリコットジャムを挟み、表面をフォンダン(砂糖とチョコレートで作る糖衣)で艶やかにコーティングして仕上げます。外側はシャリっとした口当たり、中はしっとりとした食感。その対比が魅力です。

なお、かつては”本家”をめぐって老舗洋菓子店との間で裁判まで発展したこともあります。

ひとつのケーキにここまでの誇りと歴史が詰まっている。甘いだけでは終わらない、物語を持つスイーツです。

 

アメリカ 「アップルパイ」

アメリカ合衆国を象徴するスイーツのひとつがアップルパイです。

甘く煮たりんごをたっぷりとパイ生地に包み、オーブンでこんがりと焼き上げます。焼き上げる頃には、バターやリンゴの香りがキッチンいっぱいに広がります。

家庭でも親しまれているお菓子で、シナモンやナツメグといったスパイスを加えるのが定番。リンゴの甘酸っぱさに、温かみある香りが重なり、どこか懐かしい味わいに仕上がります。

外はサクサク、中はとろり。素朴で力強いこの一品は、まさに”アメリカらしさ”を感じさせる定番デザートです。

 

台湾 「豆花(トウファ)」

台湾で親しまれている伝統的なデザート豆花(トウファ)です。

豆乳をやさしく固めて作られ、口当たりは絹ごし豆腐のようになめらか。

淡くやさしい大豆の風味が広がります。

東アジア各地でも楽しまれており、地域ごとに少しづつスタイルが異なります。一般的には、ゆでた豆やタピオカ、季節のフルーツなどをのせ、上から甘いシロップをかけて仕上げます。

冷たくしても温かくしても味わえるのが魅力。派手さはないけれど、身体にすっとなじむような、穏やかな甘さを楽しめるスイーツです。

 

中国 「月餅」

中国の伝統菓子である月餅(げっぺい)は、日本の中華街でもおなじみの焼き菓子です。特に中秋節の時期に欠かせない存在で、満月を思わせる丸い形が印象的です。

表面には美しい模様が押されており、しっかりとした皮の中には甘い餡がぎっしり。中身は地域ごとに個性があり、小豆餡やナッツ入り、黒ゴマペーストなど実にさまざまです。塩漬け卵黄を包んだタイプもあり、甘みと塩味のコントラストを楽しむこともあります。

ひとつの月餅を家族や友人と分け合う風習には、団らんや再会を願う思いが込められています。丸い形には、円満や調和への祈りも宿っているのです。

 

韓国 「ホットク」

韓国の定番おやつといえばホットク。甘い具材を包んで焼き上げる、屋台で人気のパンケーキ風スイーツです。

生地の中には、黒砂糖やシナモン、砕いたナッツを混ぜたフィリングがたっぷり。焼き上げると外側はカリっと香ばしく、中はもっちりとした食感に仕上がります。かじった瞬間に、トロリと甘いシロップが広がるのが魅力です。

日本のコリアタウンや新大久保でも販売されており、比較的手に入りやすい存在。寒い日に頬張れば、甘さと温かさがじんわり広がる、素朴で親しみやすいスイーツです。

 

まとめ

世界のスイーツをたどってみると、甘さの奥にそれぞれの国の風土や歴史、人々の想いが息づいていることに気づかされます。

祝いの日に食べられるもの、家族で囲むもの、街角で気軽に楽しむもの。形も味も違いますが、どれも「誰かと分かち合う時間」を大切にしてきたお菓子ばかりです。

一口の甘さは、国境を超えて心をつなぐ力を持っています。

次にスイーツを味わうときは、その背景にある物語にも少しだけ思いを巡らせてみてください。

きっと、いつものひと口が、少しだけ特別に感じられるはずです。