戦争と改革を超えて――ベトナム成長の軌道
約4000年の歴史を持つベトナムは、支配と独立、戦争と再生を繰り返してきました。
フランス植民地化やベトナム戦争という大きな試練を経て、1986年のドイモイ政策を転機に市場経済へと舵を切ります。
本コラムでは、歴史の流れをたどりながら、現代ベトナムの力強い成長の背景を探ります。
ベトナムの歴史
―古代文明と中国の影響
ベトナムは約4000年の歴史を持つといわれ、祖先は紀元前2000年頃に中国方面から移住してきたと伝えられています。紀元前1世紀頃に紅河流域で青銅器文化が栄えました。この地域は長い間中国王朝の支配や影響を受け、政治制度や文化の多くが中国文明を基盤に発展しました。
―独立への闘いと黎朝の成立
中国の支配は漢・唐・宋・元・明・清と続きますが、ベトナム人は独立を求め続けました。1428年、黎利が明を退けて黎朝を建国し、ベトナムは再び独立国家となります。黎朝は一時中断や内乱を経験しながらも長く続き、ベトナム史の重要な時代となりました。
―文化の発展とアオザイ
黎朝時代は文化の発展期でもあります。漢字をもとにベトナム語を表す「チュノム」が広まり、文学や学問が発展しました。また、伝統衣装アオザイは中国の影響も受けつつも、ベトナム独自の美しさを持つ衣装として現在も親しまれています。
―フランス植民地化と王朝の終焉
19世紀後半、フランスがスペインとともに軍事介入を行い、ベトナムは植民地となります。これにより王朝時代は終わりをむかえました。
―ベトナム戦争という悲劇
20世紀にはベトナム戦争が起こり、国は分断され、多くの犠牲が出ました。これはベトナム史上、特に大きな悲劇として記憶されています。
こうしてみると、ベトナムの歴史は「支配と独立」「影響と独自性」の繰り返しで形づくられてきたことがわかります。外からの影響を受けながらも、自分たちの文化を守り続けた国。それがベトナムの歴史の大きな特徴です。
歴史は年号の暗記ではなく、「なぜ今の文化がこうなっているのか」を理解するためのヒント。
ベトナムという国の奥行きは、この長い時間の積み重ねの中にあります。
ベトナム戦争
ベトナム戦争は、1954年から1975年まで続いた戦争です。もともとはフランスの植民地支配からの独立がきっかけでした。1954年にフランスが敗れた後、ベトナムは北と南に分かれます。北は共産主義、南は反共主義を掲げ、対立が激しくなりました。
北側を率いたのが建国の父と呼ばれるホー・チ・ミンです。南ベトナムはアメリカの支援を受け、共産主義の拡大を防ごうとしました。これは冷戦という、アメリカの支援を受け、共産主義の拡大を防ごうとしました。
1965年にアメリカ軍が本格参戦すると戦争は激化します。しかし戦況は思うように進まず、犠牲者が増え続けました。1968年の「テト攻撃」をきっかけに、アメリカ国内では反戦運動が広がります。
1973年にアメリカは撤退し、1975年に北ベトナムが南を制圧して戦争は終結しました。
この戦争では、アメリカ兵約5万8千人、ベトナム人は約300万人が犠牲になったとされています。ベトナム戦争は20世紀を代表する悲劇の一つであり、今も平和の大切さを考えさせる出来事です。
ドイモイ政策
ドイモイ政策は、1986年にベトナム共産党が始めた経済革命です。ドイモイは「刷新」「改革」という意味で、それまでのやり方を大きく変える決断でした。
それ以前のベトナムは、国が生産や価格を決める「計画経済」を行っていました。しかし、経済はうまく成長せず、物不足や停滞が続いていました。そこで、市場の仕組み
を取り入れる方向へ転換します。
主な内容は、農業の自由化、国営企業の見直し、外国企業の受け入れ、インフラ整備、教育・医療の向上などです。これにより生産性が上がり、経済は大きく成長しました。
その結果、ベトナムは高い経済成長を続け、貧困率も大きく減少しました。1995年にはASEANに加盟し、国際社会との結びつきも強まりました。
ドイモイ政策は、ベトナムが停滞から抜け出し、成長する国へと変わるきっかけとなった重要な改革です。
経済だけでなく、人々の暮らしや社会の仕組みそのものを大きく変えた転換点といえます。
GDP成長率
ベトナム経済は、インフレや金利上昇、世界景気の減速といった厳しい状況の中でも、全体として安定した成長を続けています。
特に海外からの直接投資が堅調で、製造業や建設業を支えています。一方で金利上昇の影響により自動車販売は減速していますが、農林水産は回復傾向にあります。
国境再開によって外国人観光客が増え、観光業や小売業などのサービス分野も活気を取り戻しています。
実質GDPはコロナ前の水準を大きく上回り、年間成長率も8%を超える高い伸びを記録しました。
不透明な要因はあるものの、ベトナム経済はコロナ禍を乗り越え、再び力強い成長軌道に戻っているといえます。
不動産事業法及び改正住宅法
2015年7月1日にベトナムの「不動産事業法」と改正住宅法が施行され、ビザを持つ外国人も不動産を所有できるようになりました。以前は購入条件が厳しく、住居目的のみ・所有期間50年などの制限がありましたが、改正後は賃貸目的も認められ、条件付きで延長も可能となり、制度が緩和されました。
ただし、ベトナムの不動産関連法は複雑で変更も多く、十分な理解が必要です。ベトナム人名義を借りて購入するケースもありますが、トラブルのリスクが高いため注意が必要です。
この法改正は外国人投資家の参入を促し、海外資本の流入によって経済成長を後押ししました。背景には、1986年のドイモイ政策による市場経済への転換があります。
現在、ベトナムは人口増加と都市開発が進み、経済成長を続けています。不動産市場は拡大していますが、投資には制度理解と慎重な判断が重要です。
まとめ
ベトナムは、古代文明から中国支配、独立王朝、フランス植民地化、そしてベトナム戦争という激動の歴史を経てきました。大きな転換点となったのが1986年のドイモイ政策で、市場経済へと舵を切ったことで急速な成長を実現します。
その後、ASEAN加盟や法制度の整備を通じて国際社会との結びつきを強め、現在も高い経済成長を続けています。
戦争を乗り越え、改革を選び、発展を遂げてきたベトナム。歴史の積み重ねこそが、今の力強い成長を支えているのです。